私にとってミルと言えば、合理的なデザインが気に入って買い求めたBraunの電動ミルが最初である。学生時代に買い求めて、7年前にこちらに戻ってきてからも1、2年は使っていたから、かれこれ20年以上も使ったことになる。愛着はあったもののさすがに古くなって、ここ数年は出番なしであった。長年の酷使で歯が減ってしまい、かなり挽きムラや微粉が出るようになっていたのだ。
Braunを仕舞ってから5年余り、その間は代役としてポーレックスの手挽きミルを使ってきた。携帯もできるコンパクトなもので、元々は中継ぎと思って求めたものだったが、エスプレッソの細挽きからフレンチプレスの荒挽きまでそつなくこなすものだから、挽くのに少々コツは要るが、特に不足も覚えず今日までやってきた。
だが頭の片隅には、"そのうちきちんとした卓上型をZassenhausあたりで"という気持ちも常にあって、時々あれこれと比べてみないわけでもなかったのである。
保守本流の正統派"La Paz"か、
独特な姿が魅力の"Santiago"か、
何の変哲もないからこそいい"Brasilia"か、
セラミック刃を用いた新世代の"Lima"か、
或いは......などとちらちら思っていたのだったが、そんな時ふと目に留まったのが、復活したZassenhausの第三世代(?)機、新型の"Guatemala"である。Zassenhausのホームページを見ていたとき、取り扱い店舗のリンクがあったものだからたどっていくと、HamburgのClassic Caffeeという店が悪くなさそうである。そこでZassenhausのコーナーを見てみると、本家のサイトではまだ紹介されていない新型ミルが載っていたのである。目にしたのは発売予告だったのだが、無駄がなく密度感の高いボクシーな姿が実に良さそうに思えた。メカニカルは伝統的な鋳鉄製で性能上の心配もなさそうである。幸い発売日までは約一ヶ月のゆとりがある。その間に具体的に検討すれば良いわけであった。
問題は送料を含めた金額だが、国内で"La Paz"を買う金額(つまり一万五千円前後)をおおよその予算とした。Classic Caffeeでは本体が€ 99,95、国際配送料€ 65で、結局ここに頼んだのだが、すぐには頼まなかった。他店と金額を比較したいということもあったが、この店の場合はカード決済がなかったのだ。PayPalはあったが、新規の顧客はそれが使えず、初回は直接ショップの口座に振り込んでやらなければならない。それでAmazonn.deあたりの様子が分かるまでに、一応準備をしておく必要があったのである。国際送金も普通に頼めば安くはない。即ち準備というのは国際送金料の安いシティバンクに口座を作り、予め送金先を登録しておくことである。これに10日ばかりかかった。使う使わぬは別にして(結局使ったのだが)準備をしたわけである。その間もいろいろ調べたのだが、EU外への配送を行っていない店ばかりで、比較のしようもない。そのうちAmazon.deで発売が開始され、こちらは一軒の店が80ユーロ代で、これはと思ったが、ここも残念なことに日本への配送が不可であった。Zassenhaus本家のONLINE SHOPではこの"Guatemala"がなかなか出ない上に、送料が€100を超えていた。というわけで結局、豆もついでに頼むこととして最初にその存在を知らせてくれたClassic Caffeeに頼んでやることにしたのである。念のための購入準備は無駄にならなかったわけだ。
それで来たのがこれだ。
なかなかの佇まいだ。 |
思ってもいなかったが、粉受けは嵌め込み式の瓶であった。 |
一度に挽けるのは濃い目の二杯分といったところか。もう少し容量は欲しいところだ。 |
調節部はいかにも精巧で信頼性が高い。 |
これについて文句はない。使い勝手については文句がある。
これは卓上型であろうが、卓上でがたつかぬよう押さえつけてやるのにかなり力を要するのだ。見ての通り、これは本体と回転するハンドルの間に空間がない。つまり、豆を挽く際に"La Paz"などのように本体を上から押さえつけて固定することができないのだ。しょうがないので横を持って下に押さえつけてやるわけだが、動かぬように押さえるのに、なかなかどうしてそれなりの握力を使わなければならない。しばらく使って、今はもう慣れたといえば慣れたが、これは女性や非力な者などでは大変ではないだろうか。ややデザインに使い勝手をスポイルされたというきらいがある。
総合的には余裕で合格点だ。悪くない買い物であった。
が、次に求めるなら"La Paz"かな。