2009/03/09

握り締めた拳の音 : Semyon BychkovとWDR Sinfonieorchester Köln 2

ケルンWDR交響楽団のホームページに日本ツアーのブログ記事が出ていた。 仙台の分は以下のとおりだ。

Japan-Tournee 2009 - Hina-matsuri
Katrin Paulsen
03.03.2009 (WDR)
Der nördlichste Trip der Tour führt nach Sendai. Die Luft ist hier deutlich kälter und abends rieseln sogar einige Schneeflocken. In der Hotellobby steht eine Art roter Treppenschrein. Was hat das zu bedeuten? Kyoko Shikata klärt das Rätsel auf: heute ist in Japan ein traditioneller Feiertag: Hina-matsuri, der Mädchen-Tag. Familien mit Töchtern stellen in ihren Wohnungen rot drapierte Treppengestelle auf, auf denen Puppen aufgebaut werden, die den kaiserlichen Hofstaat repräsentieren. In festlicher Kimono-Tracht wird dann gefeiert mit Süßigkeiten und guten Getränken. Das soll den Mädchen Glück bringen. Wie passend, dass die Tour gerade am 3. März hierher geführt hat, nach Sendai, wo japanische Holzpuppen hergestellt werden.

Vielleicht bringen die Puppen auch dem Orchester Glück. Sendai ist neben Kanazawa eine der kleineren Städte dieser Tour. Der Saal ist ein bisschen enttäuschend, klingt ein wenig wie ein Schuhkarton. Doch das Orchester spielt trotzdem ein tolles Konzert, es gibt viel Applaus. Viviane Hagner und das WDR Sinfonieorchester begeistern das Publikum.

Weniger gute Neuigkeiten erreichen uns an dem Abend aus Köln. Selbst in den japanischen Nachrichten wird gemeldet, dass in Köln das Stadtarchiv eingestürzt ist. Der Kölner U-Bahn-Bau hat also schon internationale Bekanntheit.

ツアー最北の旅は仙台です。こちらの空気は明らかに寒くて、晩には少しばかり雪さえちらつきました。ホテルのロビーには赤い階段状の櫃のようなものが置かれています。これは何を意味しているのでしょう?四方恭子がこの謎を解き明かしてくれました:今日は日本の伝統的なお祝い、女の子の日である「ひな祭り」なのです。娘のいる家庭では、家に掛け布で赤く飾った段々の棚をこしらえて、その上には皇帝の廷臣を表す人形たちが美しく並べられます。そして華やかな「着物」を着て、お菓子とおいしい飲み物で祝われます。女の子たちに幸運がもたらされるように願うのです。ツアーがちょうど3月3日に、ここ仙台へたどり着いたというのは、なんて相応しいことでしょう。ここでは日本の木彫り人形が製造されているのです。

たぶんその人形たちは、オーケストラにも幸運をもたらしてくれたのでしょう。仙台は金沢と並んで、今回のツアーの中では小さめの都市の一つです。そのホールは少し失望するもので、まるで靴箱のようにしか響きません。けれどオーケストラはそれにもかかわらず素晴らしいコンサートを行い、多くの拍手喝采が起こりました。ヴィヴィアン・ハーグナーとWDR交響楽団は聴衆を熱狂させたのです。

あまり良くない知らせは、その晩ケルンから届きました。ケルンの市史料館の倒壊は、日本のニュースにおいてすら報じられたのです。ケルンの地下鉄工事は、今や国際的に知られることとなってしまいました。


「日本の木彫り人形」というのは「こけし」のことであろう。来仙の歓迎に鳴子のこけしでも贈呈するか何かしたわけであろう。鳴子こけしは首を回すとキコキコ音を出すことができ、私の家でも飾っている。だが、地震の時はちと困る。

それにしても「靴箱」とは言ってくれる。実際そうなのだから仕方がないが、「靴箱」で聴く身にもなってほしいものだ。確かに多くの拍手喝采があったのだが、あのブラボーの連呼は東芝関係の「ブラボーマン」だったかもしれない。やや不自然な連呼ではあった。だが、ヴィヴィアン・ハーグナーはほっそりと華奢な美人で、派手すぎない赤のドレスに身を包んだ姿は、なかなかエレガントだった。

大地震でもあるまいに、ただの地下鉄工事で普通のビルが丸まる倒壊するとは酷い話だ。日本がかつての日本でないように、ドイツもかつてのドイツではない。Made in Germany品質も以前のレベルでは最早あるまい。古きよきものに心を傾けたい者にとっては実に嘆かわしいことだ。


ケルンと仙台はほぼ同じ規模の都市だが、文化的洗練よりも実学を優先するところなど実は意外と似たところがあるのかもしれない。どちらも広い世界に広々と風通しよく開かれている度合いが高いとは言えず、それ故やや独善に陥る気味がないとはいえない。ケルンのオケを仙台で聴き、ケルンと仙台の印象を合わせて振り返ってみた時、私はふと、上智で教えていたイエズス会士ヨゼフ・ロゲンドルフ(Joseph Roggendorf)氏の若かりし頃のエピソードを思い出した。ロゲンドルフ青年は仲間とワンダーフォーゲルのキャンプ旅行に出かけ、食事にはよくオムレツを作っていた。思いがけずいつもなかなか上出来で、われながら気に入った彼らはそのうまさを誇って自分たちのオムレツに「オムレツ・ア・ラ・パリジェンヌ」と名付けて悦に入っていたのである。ところがある日、旅の空でフランス人学生たちと知り合って、互いに自慢の料理を作りあうことになり、彼らの作ったオムレツをご馳走になった。それは自分たちが誇って作ってきたオムレツとは全く比較にならぬうまさで、それ以来「オムレツ・ア・ラ・パリジェンヌ」の名前はあっけなく撤回されてしまった、という話である。

笑い話とするか、教訓とするか微妙なところだが、ケルンも仙台も、Domを誇り伊達を誇っているだけでは十分ではないのではあるまいか。かつてベルティーニがベルリン・フィルを超えるオケにして見せると言ったオケは「おらが街」の土臭さを(それはそれで価値があるとしても)昇華するには至らず、「楽都」や「学都」と名乗っている仙台も(よその人は誰も知るまい)、ただ名乗っているだけで、せっかくのオケも「靴箱」で聴かなければならないのだ。


s.握り締めた拳の音 : WDR SinfonieorchesterとSemyon Bychkov 1

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